2022年11月22日、表参道で行われたイベント「IMMOTOR BAY NIGHT」では、ロバート・ハリスさん、林信行さん(以下、Nobiさん)、そして弓月ひろみさん進行によるトークショーがおこなわれました。ここでは、そのトークショーの一部をテキストでご紹介いたします。
ロバート・ハリス
作家、ラジオ・ナビゲーター。1971年上智大学卒業後、東南アジアを放浪し、バリ島に1年、オーストラリアに延べ16年滞在。シドニーで書店&画廊「エグザイルス」を経営。香港で映画製作に携わった後に帰国、FMラジオ・J-WAVEなどのナビゲーターとして注目され、執筆業でも活躍。著書に『エグザイルス 放浪者たち すべての旅は自分へとつながっている』『ワイルドサイドを歩け』『人生の100のリスト』『アウトサイダーの幸福論』 『英語なんてこれだけ聴けてこれだけ言えれば世界はどこでも旅できる』など多数。
林信行(以下、Nobi)
フリーランスジャーナリスト・コンサルタント。グッドデザイン賞審査員。金沢美術工芸大学名誉客員教授。1990年、IT最前線を取材するジャーナリストとして活動を始めるが、その後、テクノロジーだけでは人は幸せにならないとデザイン、アート、伝統産業に領域を広げる。現在はテクノロジーとデザインを基軸に、22世紀に残すべき価値を探究しさまざまな媒体やソーシャルメディアで発信。Twitter: @nobi Instagram: nobihaya
弓月ひろみ
本イベントの進行役。
カウンターカルチャーとオフグリッド
林「いま、すごい勢いでポータブル電源の種類が増えていますね。現代って、パソコンにしてもスマートフォンにしても、必ず、電気が必要じゃないですか。でも、こういうものがあれば、自由にどこにでも行けるっていうのがありますね」
弓「ロバートさんは、世界を旅してきた旅人、ということですけど」
R「さっきね。ヒッピーの話で盛り上がったのよ。機械の話は、おれ弱いからさ。でも、この製品は、つまり、自由になれるっていうことですよね。自分で、誰にも頼らずに自由な場所に行けるっていうことですよね。オフグリッドになれると」
弓「オフグリッドっていうのは、カウンターカルチャーといいますか、ヒッピーとの関連性みたいなものがあるでしょうか」
林「はい。ここでいうグリッドっていうのは電力線ですね。つまり、電力は、どうしても電力会社のグリッドに縛られている状態ですけど、このグリッドからはずれて、自由になれる、ということです。
最近だと、サイバーパンクとかハッカーたちっていうのも、インターネットのしくみからのオフグリッドっていう文脈で語られることもありますけど。そもそもパーソナルコンピュータっていうものが、冷戦時、政府などの体制側が使っていた大型コンピュータに対して、ひとりで個人で持つことができるコンピュータというもので、政府が使っていたものを、個人で使うっていうことが原点ですよね。そう考えると、縛られずに自由にやっていこうよ。っていうのはヒッピー文化に近い思想があるのかもしれないですね」
弓「ロバートさんがヒッピーになったきっかけっていうのは?」
R「僕は、1967年に世界を放浪して、1969年にアメリカで映画『Easy Rider』を観て、映画館を出た瞬間、ヒッピーになろうって思ってね。それからずっと。いまでも、フリーで生きているんですよ。Nobiさんもフリーでしょ」
林「フリーですね。さっきも、反体制からコンピュータ・カルチャーが生まれたっていう話がありましたけど。じつは90年代にもね。Windows 95以降、インターネットっていうものに縛られちゃっているっていう部分があります。パソコンの前に座り続けなきゃいけないし。自由時間が増えたかっていうと、そうでもなくて、夜中でもメールを書かなきゃならないこともあるし。意外と自由が奪われていってしまうっていうところがある。もう一回、そこのカルチャーを見直してみて、自由になるためのテクノロジーって、これから出てきてもいいんじゃないかなとは思いますね」
弓「確かにスマートフォンとかiPadみたいなものって、寝っ転がりながらでも仕事ができたりとか、飛行機の中でも仕事ができたりとか。自由といえば自由ですけど」
R「でも仕事に縛られてる」
弓「通知がずっと来て、通知についつい反応してしまうっていう。でも、デバイスがあることによって温泉でも仕事ができるし、ワーケーションっていう言葉もありますけど、どこにいるかは、別に、どこでもいいかなっていう。そんな気はしますね」
林「コロナ禍で、そういう部分が加速したっていうところはありますね」
弓「いま、ロバートさんはお昼の番組をがっつりやってるので、なかなか」
R「 仕事に縛られてる(笑)」
Web3と新しいライフスタイル
弓「いま、Web3っていうワードがありますけど、これはNobiさん、皆さんにわかりやすく説明するには、どうやって伝えたら良いでしょうか]
林「これは、なんて言うのかな。Webの民主化というべきか。最近のWebは、大きなテクノロジー企業が発展させてきたところがあります。多くの人はそうやって上から提供されたものを、そのまま使うしかないっていう部分があったのですが、Web3では、使う人々のもとに主導権を取り戻そうっていうね。お金のやりとりの代わりとして、トークンっていうものが登場して、NFTと呼ぶんですけど。ただ、最近は、それがバズワードになってしまった部分があります。なにがいけないのかって言うと、そこに資本主義的なものが出てきてしまって、そこでどうにかして儲けようっていうのが出てきちゃったんですよね」
弓「新しいものっていうのは、どうしても混沌としがちっていうか。そういう部分ありますよね。でも、そういうなかで、このWeb3の技術を取り入れたポータブル電源っていうものなわけですけど。今後、このような製品の登場によって、ライフスタイルの変化とか、どんな未来がやってくるのか。ということをNobiさんにお願いしたいんですけど」
林「いま、Web3っていうのも一種のバブル期で、これから全体としてどうなるのかが逆に見えにくくなってしまっています。でも、例えばこの製品がつくろうとしている未来とかに注目すると、わかりやすいかもですね。 たとえば、これまでって、カフェとかに入って電源をちょっと借りて使ったとしても、どれくらい使ったか、わからなかったわけじゃないですか。お客の側は気にせず使い放題だけれど、お店としても、どれくらいコストがかかっているのかがわからず不安なところがあります。でも、このIMMOTOR BAYなら、電力が可視化されて、どれくらい使ったのか、アプリでわかるわけですね」
弓「そうなんですよ。アプリ上で、いま、どれだけの電力を持っているのか。どのくらい使っているのか、わかるんですね」
R「いま、どれだけソーラーパネルで充電したものなのか、電力会社から充電したものなのかもわかるっていうことなんだよね。でも、僕なんかは行動の自由につながるっていうのが魅力を感じますね。どこに行っても仕事ができるわけだし。キャンプなんかにも便利なわけでしょう」
弓「そうですね。最近だとグランピングとかありますけど。『いかにもアウトドア!』っていうのが苦手なかたでも、これを使うことで、便利なアウトドア体験を気軽にできると思います」
林「これにギターのアンプなんかを繋いでね。自分で演奏して、お金を稼ぐことができるかもしれないですね」
弓「いま、家を持たない暮らしっていうのがありますよね。自分でバンを改造して、そこで生活するような。それこそ、現代版のヒッピーというか」
R「オーストラリアに行くと、リタイアしたひとって、みんなモーターハウスでオーストラリア中、旅をしながら暮らしてますね。で、ちょっと大きなキャンプ場なんかに行くと、そこでベジタブルガーデンを作ったりしてね。飽きたらまた移動するっていう、そういう生活をしてるひとがすごく多いんだよね。日本でも、そういうライフスタイルって可能なんじゃないかな。この製品はコンセントが2つついてるね」
林「そうですね。自分の住まい方っていうのを自分で設計できるっていう自由さがありますよね。コンセントのことをウォールって英語で言いますけど、壁にしばられてたわけですよね。それも、この製品なら、壁からも自由になるわけです」
弓「充電することとか、電力が可視化されるっていうのは、たとえば、スマートフォンなどの充電にどれくらい使うのか、そういうのがわかりますよね」
林「スマートフォンによっても電力消費が違うじゃないですか。そういうのをみんなが意識すると、あ、このスマートフォンは、こんなに違うんだ。とか。消費電力を意識したスマートフォンが登場してきたりすると、最終的に世界全体でこれだけ節電になりましたっていうことにもなりますね」
弓「可視化されることで、どこに、どれくらい使っているのかとか。何を止めたら節電になるのかとかですね。電力の使い方を意識してみるだけでも、変わってくるんでしょうね」
本イベントは、平日夜ではありましたが、表参道 Wall x Wallにたくさんのご来場をいただき、IMMOTOR BAY500や、この製品が見据える未来について、非常に多くの来場者と意見交換などを行うことができました。この場をお借りして、御礼申し上げます。